パート・アルバイト雇用で知っておきたい法律知識5選

はじめに
パート・アルバイトの採用時にも、正社員と同じくきちんとした労務手続きが必要です。手続きを怠ると、労使トラブルや行政指導、助成金の不支給といったリスクが発生します。 パート・アルバイトを雇用する会社のために、押さえておきたい5つの法律知識をわかりやすく解説します。
「短時間だから大丈夫」「知り合いだから」との理由で、手続きを曖昧にしていませんか?
労働時間や雇用形態にかかわらず、企業には法的責任があることを理解しましょう。
よくあるトラブル例
①有給休暇に関する誤解
②税金の扶養範囲を超える勤務
③社会保険の扶養に関する誤解
④残業代・割増賃金の発生
⑤契約内容・勤怠管理の曖昧さが招くトラブル
これらの課題を解決するために、以下の5つのポイントを抑えてトラブルを防止しましょう。

宮本人事労務パートナーズ代表。
石川県金沢市出身。金沢市を拠点に、全国対応で助成金申請に注力した社会保険労務士事務所を運営。
中小企業が「人」と「経営」の両面で強みを発揮し、持続的かつ自律的に成長できる環境をサポート。
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1.有給休暇の誤解とトラブル
パートやアルバイトにも有給休暇はあるの?と驚く方が多いかもしれません。
実は、労働基準法第39条により、正社員でなくとも一定の条件を満たせば有給休暇が付与されます。
条件は主に以下の2つです。
①入社から6か月以上継続勤務していること
②全労働日の8割以上出勤していること
この条件を満たせば、週の所定労働日数に応じて有給日数が比例して付与されます。
(例えば週3日の勤務なら年5日の有給が付与されるなど)。
よくある誤解として「週1〜2日勤務だから有給はない」「学生には有給はない」…と思い込んでいるケースがありますが、このような場合でも有給休暇は付与されますので、パート・アルバイトは取得することができます。
実務の担当者は、有給休暇の残日数を正確に把握し、管理することが求められます。
就業規則(会社のルールブック)や労働条件通知書(入社のときに渡す契約書)には、あらかじめ有給休暇を使用するときに申請方法も明記し、秩序づけておくことも必要です。
近年、労働基準監督署の調査では、有給管理簿が法律どおり運用されているかについて確認されますので、事前に整備しておきましょう。
2.税金の扶養とシフト管理の落とし穴
学生アルバイトや主婦のパートから「扶養内で働きたい」と希望されることがよくあります。
ここで注意すべきは「扶養」の種類です。
扶養には「税金の扶養」と「社会保険の扶養」というの2つの異なるルールがあり、「扶養内で働きたい」という希望がどちらの扶養を指しているか確認する必要があります。
税金の扶養とは簡単に言えば、扶養内の金額に抑えると、扶養している方の所得税が安くなる…という制度です。
扶養している方の会社によっては、「扶養している家族」がいる場合、家族手当が支給される…というルールもあります。
税金の扶養について、現在のルールは以下のとおりになっています。
モデルケース:父(会社員)、母(パート)、子(アルバイトの場合)
配偶者の場合
年収160万円を超えると、超えた分の年収に応じて、徐々に扶養しているお父さんの税金が増えるイメージです。
大学生"以外の"扶養親族の場合
年収123万円を超えると、子供を扶養扱いにしていたお父さんの税金がドンと増えるイメージです。
大学生の扶養親族の場合(12月末時点で19歳~22歳の子)
年収160万円を超えると、超えた分の年収に応じて、徐々に扶養しているお父さんの税金が増えるイメージです。
この場合の年収は1月~12月に支払われた金額を言いますので、年末の忙しい時期に扶養の範囲に収めないといけないから、シフトには入れません…という状況になることは避けなければいけませんね。
また、私の過去の経験談ですが、扶養の意味は分かっていないけど、とりあえずみんなが扶養内で働くから、私も扶養内としたいという方も一定数いらっしゃいます。そのような方には丁寧に制度を説明することで、もっと働きたいと方針転換してくれる方も多いです。
当社の顧問契約サービスでは、従業員向けの説明資料などもご用意し、扶養に関する説明の負担を減らす取り組みを行っておりますので、気になる方はコチラをご確認いただければと思います。
※これらのルールは、記事を執筆している2025年7月25日時点の情報ですが、今後の税制改正によって、ルールが変わる可能性もあり、最新情報での確認が必要です。
3.社会保険の扶養と保険加入に関する誤解
先ほどは"税金の扶養"についてお話ししましたが、"社会保険の扶養"は別のルールになっています。【社会保険の扶養内で働くためのルール 】
①今現在の働き方を12ヶ月続けた場合、年収130万円未満となる。
※1月~12月の給与ではありません。
②扶養してくれる方の年収が扶養される人の2倍以上である。
この①と②を満たす場合には、社会保険の扶養となり得るイメージです。
また令和7年の税制改正大綱で、19歳~23歳の学生については、①の条件が150万円未満となる予定ですが、まだ正式なアナウンスはなされていません。
また、社会保険の扶養から外れると、パートの妻は国民年金保険料と国民健康保険料を納める必要があります。
※妻以外の扶養親族の場合は、国民健康保険料の負担が新たに増えます。
社会保険の扶養から外れる場合、新たに負担も増えるし、それなら会社の社会保険に入れてあげようとお思いの経営者さんもいらっしゃると思うのですが、その場合は下記の条件を満たす必要があります。
【厚生年金加入者が50名以下の会社の場合】
①週の勤務時間 が正社員と比べて4分の3以上であること
②月の勤務日数が正社員と比べて4分の3以上であること
この条件を満たさないと社会保険に加入することができません。
※逆に、この要件を満たす場合は、原則として社会保険に入らなければなりません。
一方、新たに社会保険の加入をした従業員がいる場合に獲得できる可能性のある助成金制度もございます。
このように公的支援制度である助成金を活用しながら、人手不足を乗り切る必要がありそうです!
※助成金申請は、弁護士、社労士のみが法的に代行可能な独占業務であるため、行政書士や税理士が代行することは法律上、禁止されています。
4.残業代・割増賃金の請求
パート・アルバイトなら、時給制だから働いた時間×時給を払っておけばいいんでしょ。…と思っていらっしゃる方は要注意です。
1日8時間、週40時間を超える場合には、残業代が発生します。
また、22時~5時の間に勤務した場合は、深夜勤務手当が発生します。
夏休み期間中や年末年始は、1日7時間×週6日で働いてもらうこともあるんだよね…
土日だけ1日10時間勤務なんだよね…
という方も多いと思います。
その場合も原則として残業代が発生するのですが、労働基準法ではそのような繁忙期に合わせた働き方ができるように変形労働時間制という制度も設けられています。
制度を正しく設計して、適正な支払い体制を整えましょう。
5.勤務管理の曖昧さが招く労働時間の食い違いトラブル
契約書や出勤簿がない形で「口約束」で勤務させていると、思わぬトラブルに巻き込まれます。
・最初は6時間で1万円で働いてくれと言われていたが、実際は8時間勤務だった…
・本当は休憩も取れずに働かされていた…
というような申し立てがあった場合に対抗する術がなくなってしまいます。
言った言わないの水掛け論を防ぐためにも、数日の勤務や臨時的な勤務であったとしても、契約書や出勤簿の管理を行いましょう。
このようなトラブルを防ぐため、労働基準法では、労働契約を取り交わし、労働条件通知書を書面で交付することが求められています。
6.まとめ
アルバイトやパートの採用、臨時的なスタッフの採用であっても、しっかりとした労務知識の元、正しい雇用管理をしないと、大きなリスクを伴います。
まずは今回ご紹介した「5つの労務知識」を押さえ、社内体制を整備し、トラブルを未然に防ぎましょう。
📌 よくある質問(FAQ)
Q:正社員の採用の場合、注意すべき手続きは?
A:正社員の場合は、長期で基幹的な業務に従事するため、より厳密な管理が必要です。
Q:雇用保険の加入要件と社会保険の加入要件を満たす場合の手続は?
A:雇用保険の場合、ハローワークへ雇用保険被保険者資格取得届と出します。社会保険の場合は、年金事務所へ社会保険被保険者資格取得届(+被保険者移動届)を提出します。電子申請で行うことも可能ですが、正しい手続きをするためにも、初回は窓口での申請をお勧めします。
Q:パート・アルバイトのみの会社でも使える助成金はありますか?
A:はい。50代のパート・アルバイトを雇った場合の助成金や、業務の効率化を図れる設備に使える助成金(パソコン等の購入含む)がございます。
各助成金ごとの支給要件・申請時期を満たす必要があります。採用前の早い段階で当社までご相談ください。
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